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2021.08.12テクノロジー
AI技術の進歩や、技術先進国による研究が促進され、様々なテクノロジーが日々生み出されています。中でも最も可能性を秘めており、科学技術界で注目されている「ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)」の概要をざっくりとご紹介いたします。
ブレイン・マシン・インターフェース(Brain Machine Interface:BMI)とは、脳と情報通信機器を直接(または間接的に)つなぐ技術の事、もしくは脳とコンピュータなどとのインタフェースをとる機器等の総称のことをいいます。脳には優秀な神経ネットワークがあり、そこに流れる微弱電流から出る脳波や脳の活動による血流量変化などに伴う信号を検知する事によって人の考えていることを読み取ります。例えば、テレビの音量を上げたいと考えるとその脳波をBMIが読み取り、脳波を解析・検知したBMIがテレビへ信号を送ることにより、音量を上げる事が可能になります。
MRIなどの生体内の内部の情報を、生きたまま観測する技術が出来た1990年以降にこの技術は現実味を帯びてきました。BMIには2つの方式があり、頭蓋骨の開頭を行い、脳に直接電極を埋め込む方法の「侵襲式」と、頭蓋骨の開頭を伴わない「非侵襲式」の2つに分けられます。侵襲式は直接埋め込むことにより、高精度の読み取りが可能になりますが、デメリットとして手術による感染症・脳の損傷といったリスク、電極の経年劣化などの問題点があります。逆に非侵襲式は脳を損傷するリスクは少ないですが、頭蓋骨などによって脳波が変化してしまうこともあり、侵襲式と比較して精度が劣ってしまうデメリットがあります。
BMIは様々な応用が出来ますが、リハビリ分野における実用性は高いと言われています。例えば体がマヒしていても、脳は活発であるという状態であれば、BMIを利用することで患者さんの運動機能の向上に役立ちます。また、医療分野にも応用が出来ます。日本の国民病「腰痛」は脳が作り出しているものもあると科学の進歩で解明されつつあります。「痛み」と脳の関係性を利用し、脳波をコントロールすることで痛みを緩和するアプローチも実際に始まっており、医療現場における更なる活用が期待されています。また、脳波を機械に伝えることができるので、脳科学と電子工学という異なる分野の融合が可能になり、インターネットへの応用や、マーケティング、スポーツや教育まで様々な分野で活躍ができると言われています。
便利なBMIですが、やはり課題も多くあります。その中の大きな懸念点としては「プライバシー」の問題です。BMIによって脳波を読み取ることができるので、「何を考えているのか」全て筒抜けになってしまう可能性があります。すでに高い精度で何を思い浮かべているかが分かるようになっており、今後のBMIの発展に伴って、「どこまで許容してよいのか」、というプライバシー保護の課題が大きく立ちはだかるでしょう。
BMIの技術が進めば、マウスやキーボードなしで入力・検索できたり、頭で考えるだけでキャラクターを動かしてゲームができたりするのではないでしょうか。
SF映画などでよくある、言葉を発さず、考えていることを伝えるテレパシーのようなものや、考えただけでモノを動かしたりする超能力のようなことができる未来が、もうすぐそこに来ています。